やばいって。
 何所のどいつがアイス喰ったかしらないけれど。
 本気で消されるぞ…??
 何時か言ってたしなぁ。
 『食べ物の恨みは恐ろしい』って。




 我らが姫君のロクサス。
 姫君って言っても…性別は立派な男なんだけど、何せ気質がお姫様。
 とっても我侭で自己中で。
 それでもって実力は機関の中でもトップクラス。
 本気になったあいつを止められるのは、機関のメンバーの中でもボスくらいか。


「誰だ、俺のアイス喰ったの!」


 ロクサスの叫びが聞こえてくる…巻き添え食らう前に逃げないと…。
 正直、本気になっているあいつを相手にしたくない。


 その場から立ち去ろうと、抜き足で移動する。
 闇の力なんて使ったら、気配で見つかってしまう。
 ついでにロクサスはシグバールのように『移動』する事にも長けている。
 闇のゲートを開き潜り抜ける――その動作の間に捕まってしまうだろうし。
 そう考えるとやっぱり、抜き足で移動って事になってしまう。
 機関の一員とあろうものが…仮にも一員のはずなのに、これはどうだろうと思わないでもないが仕方が無い。
 なりふりなど構ってられないし。


 俺はまだ、消えたくないんだ!


 コートの端をひっぱられる感覚。
 あぁ、『神様』。俺のノーバディ生もここまでですか?
 覚悟を決めて振り返れば、とてもにこやかな笑顔のロクサスが立っていた。


「ろ、ロクサス…」
「アクセル、俺のアイス知らない?」


 内からものすごい殺気を感じます。
 けれど、それを更に引き立てる極上の笑顔が黒いです…。
(思わず敬語になってしまう俺。


「知らない…俺、本当に知らないって」
「ふぅん」


 俺の正面に立つと、髪を思いっきりひっぱり強引に頭を下げさせるロクサス。
 俺の口元に鼻をよせ、匂いを嗅ぐ。


「匂いはしないな…本当にアクセルじゃないのか」
「マジで俺じゃないって!」


 両手を広げ、降参のポーズを取りながら訴える。


「だったら用はないや」


 そう言うなり、あっさりと俺を放す。
 濡れ衣が晴れたってことは嬉しいけれど、あんまりにもあっさりすぎませんか?


「ロクサ…」
「邪魔だ」


 そう言うなりみぞおちに蹴りを入れ、キーブレードの柄の部分で殴り飛ばすロクサス。
 あまりの痛みに、腹を抱えて蹲りつつ、ちょっかいかけようとした自分が情けなく思えてきた。
(ノーバディなんだけど、俺。






 折角"ギャンブラー"からお金巻き上げて買ってきたアイス。
 すぐに食べようと出しておいて、ちょっとした用事を済ませて戻ってきたら、残骸を残して中身だけは消えていて。
 むかついたし、弁償させようとして犯人探ししたらアクセルには絡まれるし…散々だ。


 絶対犯人見つけてやる。
 『食べ物の恨み』は恐ろしいってその身に刻ませて、消してやるよ…。






 あぁ、本日もお姫様がバリバリ黒いオーラを放出しているのを感じる。
 その黒さで、その実力は反則。
 ロクサスの事だ、本気で消滅させかねないぞ……。


 俺ノーバディだけど。
 なんだかキングダムハーツ手に入れる前に心が芽生えそう。




 アイスを食べた犯人は結局見つからず。
 お姫様を守っていた数体のノーバディが消えていただけだった。






 11.バーサク状態
 『食べ物の恨みは恐ろしい』という台詞を引っ掛けて。
 バリバリ戦うロクサスも書きたかったけれど、それだとダブりそうな気がして…お約束の食べ物ネタにしてみました(こっちもダブるかしら)。
 アイス食べた犯人は…サムライ?(笑
 毒味と称して全部食べてしまったとか。
 ほら、お姫様親衛隊って事で…ぁぁ、私自身暴走気味。
 すみません。